嫌い嫌いは好きの内
ぶきっちょゴフェ奮闘記
*
俺はマカアルバーンが嫌いだ。
成績優秀で堅実な模範生だったが馬鹿馬鹿しい事には割と率先して突っ込んでいくしそれが有意義だと思ってる。
勤勉さが嫌みにならない快活で奔放な性格は相手に好感を持たせる。
俺はそんなマカアルバーンが嫌いだ。
理由?そんなもんあいつムカつく何か気に入らない。
これだけで十分だろう。
「イラッイラするんだよおおお!!!!」
「え~、そりゃ私も最初は何かアレかなとは思ったけど凄いんだよ蟻地獄。この世の理がすべて詰まってる。弱肉強食、一は全、全は一。犠牲になった蟻さん達に1分間の黙祷を捧げたい…自分…勉強させてもらいました…。ほらゴフェルも一緒に、な~む~」
「あああああもう!もうほんっとイライラするもおおおお!何なのお前何で何時間も蟻地獄観察とかしてんの馬鹿じゃないのホントは馬鹿なんじゃないのっていうか確実に馬鹿なんだけどこの馬鹿に毎回僅差とは言え試験で負けてる俺はもっと馬鹿!!!俺の馬鹿!!!!」
「負けって言うか完璧の"璧"を"壁"って書いちゃったりするゴフェルのうっかり具合がチャーミングで私は好きだよ。がんば!」
「ッ~…おおお俺はもうもうもうそーゆーとこ含めて全部全部お前が嫌いだ!!!!」
「ガビーン!」
「口で言うな!」
俺はマカアルバーンが嫌いだ。
ゴフェルもマカアルバーン同様大変優秀な生徒であったが、彼のベクトルは常にただ1人の為に向けられていた。
執着心が強く利己的で不器用な性格は反感を呼んだがそれを補って余りある見目の美しい容姿は良くも悪くも人目を惹いた。
「ゴフェルってきついよな」
「いつもひとりでいるし」
「あいつはそれがいいんだろうよ」
「いやなやつ!」
いいえ。彼はいつだって不器用だっただけなのです。
「ゴフェル、寒いね」
「…教室に戻れば良いだろ」
「ゴフェルと一緒ならね」
「…」
彼はとても不器用な子供でした。
人より出来ることは多かったけれどみんなと同じ様に出来ないことだってあったのです。
「帰れよ、ほっといてくれ、おれにかまうな」
「ゴフェル、」
「おまえなんかだいきらいだ」
昔から何でも人一倍上手にこなせました
勉強も運動も誰にも負けませんでした
けれどゴフェルは誰よりも人一倍不器用だったので
ありがとうもごめんなさいも
自分の気持ちすら伝えるのが下手くそでした
そんなゴフェルの大人びた物言いと歳不相応に落ち着いた様子は
大人達の目にはには可愛気のない生意気な子供のように写りました
気付けばいつもゴフェルは一人きりでした
「あのさ、ゴフェルくんっていつも教室で勉強ばかりしてるでしょ?勉強は私も好きだけど子供の本分はよく学びよく遊ぶ事だってパパが言ってた。人生なんてあっという間なんだからその時じゃないと出来ないことはその時に思いっきりしておかないと勿体無いわよ!ボーイズビーアンビシャスよ!ってママが言ってた。だから、ねえ」
私と遊ぼう!外に出て太陽をいっぱい浴びてビタミンEをたくさんとらないと将来骨粗鬆症にでもなったらどうするの!
そう言って笑いながらゴフェルを椅子から立たせると
呆然としたままの彼の手をひったくるようにして彼女は教室を飛び出しました
「私マカアルバーン!マカって呼んで!」
「…、、お、おい!な、何なんだよお前!ちょ、」
「お前じゃないよマカだよ!まずは砂場から攻めようか!私今サグラダファミリアを建設中だから手伝って!今日中に完成させるから!」
「いやあれは元々建設途中だから完成とかそんな…じゃなくて俺はお前と遊ばないしお前の名前なんか呼ばない!わかったら手を離せ!!」
「マカ!」
「いやだから、!」
「マカ!!」
「ッ、あのなお前、」
「マカ!!!」
「ッ…くどいぞ!マカアルバーン!!!」
それから事あるごとにマカはゴフェルを構いたがりました
彼はその度に迷惑極まりないとつっけんどんな態度をとりましたが
彼女はどこ吹く風といったように飄々として彼を連れ回すのです
「ゴフェール!見て!カミキリ虫捕まえた!」
「ぎゃああああ馬鹿近づけんな近づけないでいやあああ!」
「ゴフェルー!探検行こう!ツチノコ探しに行こう!」
「…お前昨日の都市伝説スペシャルにまんまと触発されたんだな、なんて分かり易い奴…俺は行かないからな絶対行かないからなうわちょ、引っ張るな馬鹿!またかよチクショウ!」
「ゴッフェルンルン!クッキー作ってみた!どうよ!女子っぽくねー!?」
「…俺の知ってるクッキーはこんなに黒焦げじゃないし新種のギミックみたいな形じゃな…うわ苦い!!苦しょっぱい!!糖分はどこに置いてきた馬鹿!この馬鹿!」
かのじょがみせてくれた
いままでとなにもかわらないはずのけしきは
ふしぎとあざやかにいろづいてみえて
ゴフェルは本当は嬉しかったのです
そんなある日、マカは風邪を引いて学校を休みました
ゴフェルはやっとうるさいのが居なくなって清々したと思いましたが
彼女が居ない教室は
いつもより
なんだか
ずっと(つまらない)
1日経って2日経って3日経った頃ゴフェルは言いようのない
とても恐ろしい気持ちになっていました
喉の奥が熱い
押し潰されそうな程の息苦しさに全身が強張って勝手に震えだします
こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい
彼はその気持ちが何という名前かすら知りませんでした
だってずっと1人だったので
突然1人が2人になって
また1人に戻った時
彼は初めて ゛寂しい゛ と言う気持ちを知ったのです
あいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだあいつのせいだ
あいつのせい で お れはい ま こ んなにも くるしい
あいつなんかだいきらいだ
***
なんか最初と設定が狂ってきたのでおわれ
ゴフェさん
お返事
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